こんにちは。

先日、とある体操教室に行ってきました。

そこで最初に体験したのがこちらの画像です。

　
何だか分かりますか？

はい、卵でした♪　　（生卵）

卵料理は好きなのでよく食べますが、このような向き合い方をしたのは初めてでした。　

いざ立たせようとしてもなかなか大変です…。

卵と数分間向き合ううちに・・・

あれ、さっきと何かが違う…　

卵が立とうとしてる？？？

何やら手の感触が違ってきました。

卵が立ちたいように…と根気よく支えていると、ピタッと床に吸いつくような感じで立つではありませんか！

これには感激しました♪

卵を立てられたこともそうですが、この佇まいが何とも美しいのです♡

卵の立ち姿から“立つ”という行為の本質を考えさせられました。

このきっかけをいただいたのがこちらの本です。

野口体操　からだに貞く　　
野口三千三 著　　春秋社

この年末年始に読んだのですが、あまりの感動で体が震えました。

帯には次のように書かれています。

「体操とは
　自分のからだの動きをてがかりにして
　人間とは何かを探究する営みである」

私が追究している世界観の本質が“からだ”という切り口でたくさん書かれていたのです。

まさか体操の本からこれほど学べると思っていませんでした。

せっかくですので、この本に書かれている“卵の立つ話”を一部抜粋にて紹介します。

卵の立つ話

　
　十年ほど前にある会合で、食事の時に生卵が出てきたので、お膳の上にひょいと立ててみせたんです。コロンブスはゆで卵の尻をつぶして立てたというけれども、私は正真正銘まるごとのまま膳の上に立てたのです。

　その時のみんなの反応が実にさまざまで非常に面白いと思いました。いちばん極端なのは、「あっ、卵も立つんだな」それでおしまい。ところが、なかには興奮状態で、食べることなんか忘れてしまって大さわぎ。カメラをもってきて、あっちから撮り、こっちから撮り……。

　別に卵を立てたからといって私に特別な才能があるわけじゃありません。普通の人だったら誰でも、いつでもどこでも立てることができるんです。私はこのことを確か中谷宇吉郎の科学随筆の中で読んで、すぐにやってみたんです。立つ時のズシンとしたあの感じが面白くて、それからはよくやりました。あの感じは、実に多くのことを私に教えてくれ、 “立つ”ということを、これほど深く考えさせてくれたものは他にありません。この卵が立つ原理こそ、人問の立ち方の本質を示しているんじゃないでしょうか。

　卵が立つ時のあの感じ。あれは卵自身のもつ重さから受ける感じだろうと思います。卵は立つのが当然の如く立っている。それでいて別に重さに耐えているという感じではない。むしろ、やすらかで透明感がある。ほんとうに、すっきりしている。

　ということは、重さということを負担に感じる感覚は、どうもおかしいんじゃないだろうか。重いというコトバを、重荷を背負うとか、負担とかいう意味でとらえている間は、ほんとうの存在の仕方をしていない証拠じゃないのかなあ。立っている場合でも、立つのが苦しくなったり、自分の体重が邪魔になるように感じたら、どこかが何かが狂っているんじゃないのかなあと思います。

　確かにコトバとしては重さというコトバを使うけれども、それは負担じゃなくて、むしろ存在感、自分がここにいるという存在感なのじゃないだろうか。これはさらに安定感にもつながってきます。そして地球との関係が本当に成立している状態、これをこそ重さと言うべきだろうと思うんです。

　安定感というコトバが出てきましたが、これだって、従来の建築や美術にわずらわされて、本来の感じを見失っています。土台ががっちりしていて、何かにしがみついているような感じ。それを安定だとつい考えがちですが、本来の安定というのは、別に底面が広くなくってもかまわない。ただ一点で接していても、それが地球の中心とほんとうにつながりが出てくれば、たとえどういうかたちであれ、安定するわけです。そして、動こうと思えば、いつでもちょっとの力で動けるんです。ですから、ちょっとの力で卵がたおれるということは、常識的には不安定ですけれども、逆の見方をすれば、ちょっとの力で動くことができるということです。

　これは人間にとっての立ち方のもっとも基本じゃないでしょうか。わずかの力で動くことができるから、移動が自由自在です。次々と新しく地球と結びつくことができる。新しい関係をどんどんつくり出すことができる。地球の中心にまとまることを重さというならば、地球と新しいまとまりの関係をもつために動きというものが出てきたと言えます。そうであるならば、これは決して不安定なはずはなく、むしろ安定と言うべきでしょう。安定と不安定が、ここでは同義語的な意味合いをもっていて非常に面白いと思います。

野口三千三先生は、 “立つ” という行為を次のようにとらえていました。

「立つということは、そのものがそのものとして本来もっているあり方をするようになることである」

次のようにも書かれています。

卵と話し合っていると、私は無限にいろいろなことを教えられます。卵に心から感謝しなければなりませんね。このことは卵に限ったことではなく、どんなつまらないものと思えるものでも、必ず何か自然の原理を教えてくれます。断言して問違いないことです。要は、自分の向かい合い方であり、聴く耳を持つことではないでしょうか。

卵との向き合い方でたくさんの気づきと学びをいただきました。

この本は絶版のようですが、中古本は手に入るようです。

興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。

野口体操についてはネットで検索するとたくさん出てきますので、参考になさってください。

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