2022.07.24自由からの逃走 エーリッヒ・フロム
こんにちは。
久しぶりに難しい本を読みました。
こちらです。
「自由からの逃走」 エーリッヒ・フロム
こちらの本、アメリカで発刊されたのが1941年。
日本での初版が1951年12月30日で、私が手にしたのはなんと129版。
81年に渡り世界で読まれている名著です。
エーリッヒ・フロムは、1900年生まれのドイツの社会心理学、精神分析、哲学の研究者です。
この本についてWikipediaには次のように書かれています。
ナチズムに傾倒していったドイツを考察したことから生み出され、国民は何が原因であのような状況となり、また何に導かれてあのように進んで行ったのかという内容である。ここでこのような状況を生み出すこととなった根源として考えられたのが「自由」である。
当時には自由というものは全ての国民に与えられていたがゆえにあのような状況を生み出すこととなったわけであり、そのことが批判されており社会そのものが自由の意味を履き違えていたということであった。自由というものは本来はそれが与えられることに対しての孤独や責任を受け止めるということが求められるわけであり、その覚悟を持った上で自由を希求して得た者によって構成される社会こそが望ましい社会の形態といえるわけである。
えらい重い本だなぁ…と思いつつも、気になってしょうがないので読んでみましたら、これが大正解でした♪
まず最初に衝撃を受けたのは、この本の扉に書かれている3つの言葉です。
この本を読み始めたのは近所のカフェでモーニングをしていた時なのですが、これらの言葉を初めて目にした時、頭を殴られたようなショックが全身を貫きました。
しばらくの間、時空を超えた感覚になり、すっかり忘れているはずの幼少の頃の記憶が次々に映像として浮かび上がったり、時空がゆがんだような言葉にならない妙な世界を味わうことになりました。
はたから見たらボーっとしてただけですけどね(笑)
私にとってはこの言葉に出合っただけでもこの本を買った甲斐があったと思えましたので、備忘録がてら残しておこうと思います。
1つめ・・・
もし私が、私のために存在しているのでないとすれば、だれが私のために存在するのであろうか。
もし私が、ただ私のためにだけ存在するのであれば、私とはなにものであろうか。
もしいまを尊ばないならば――いつというときがあろうか。
「タムルード」 第一編「ミシュナ」より
2つめ・・・
われわれは汝を天上のものでも地上のものでもなく、死すべきものでも不死のものでもない存在として創造した。それは汝が自分の意志と名誉にしたがって、自由に、汝自身の創造者であり形成者であることができるようにである。われわれは汝だけに自分の自由意志による成長と発展とをあたえた。汝はみずからのうちに宇宙的生命の胚珠をもっている。
ピコ・デラ・ミランドラ 「人間の尊厳について」
3つめ・・・
人間に内在する不可侵の権利ほどに不変なものはない。
トーマス・ジェファースン
著者がこの本で述べていることはとても奥が深いので私があれこれ語ることはしませんが、このブログを見ていただく方に何かしら響けばと思い、一部を抜粋して紹介します。
まずは、序文から一部抜粋。
自由は近代人に独立と合理性とをあたえたが、一方個人を孤独におとしいれ、そのため個人を不安な無力なものにした。この孤独はたえがたいものである。かれは自由の重荷からのがれて新しい依存と従属を求めるか、あるいは人間の独自性と個性とにもとづいた積極的な自由の完全な実現に進むかの二者択一に迫られる。本書は予測よりもむしろ診断――解決よりもむしろ分析――ではあるが、その結果はわれわれの行為の進路に一つの方向をあたえている。なぜなら、全体主義がなぜ自由から逃避しようとするのかを理解することが、全体主義的な力を征服しようとするすべての行為の前提であるから。
次は、愛について触れているくだり。
愛は、もともとある特定な対象によって「惹きおこされる」ものではない。それは人間の中に潜むもやもやしたもので、「対象」はただそれを、現実化するにすぎない。憎悪は破壊を求めるはげしい欲望であり、愛はある「対象」を肯定しようとする情熱的な欲求である。すなわち愛は「好むこと」ではなく、その対象の幸福、成長、自由を目指す積極的な追究であり、内面的なつながりである。
自由の二つの意味について。
近代人にとって自由は二重の意味をもっているということ、これが本書の主題であった。すなわち、近代人は伝統的権威から開放されて「個人」となったが、しかし同時に、かれは孤独な無力なものになり、自分自身や他人から引きはなされた、外在的な目的の道具となったということ、さらにこの状態は、かれの自我を根底から危うくし、かれを弱め、おびやかし、かれに新しい束縛へすすんで服従するようにするということである。それにたいし積極的な自由は、能動的自発的に生きる能力をふくめて、個人の諸能力の十分な実現と一致する。
本来の自由を手に入れるために・・・。
人間が社会を支配し、経済機構を人間の幸福の目的に従属させるときにのみ、また人間が積極的に社会過程に参加するときにのみ、人間は現在かれを絶望――孤独と無力感――にかりたてているものを克服することができる。人間がこんにち苦しんでいるのは、貧困よりも、むしろかれが大きな機械の歯車、自動人形になってしまったという事実、かれの生活が空虚になりその意味を失ってしまったという事実である。
いやぁとても難しい本でしたが、とてもためになりました。
この本を発刊した当時からしたら今ははるかに自由度の高い世の中ですが、自由というものの本質をはき違えているために、それを手に入れられない現代人の課題をありありと認識しました。
この現実を知り、受け入れないと、本来の自由というのは永遠に手に入らないものなのかも知れません。
ご興味のある方は手に取ってみてはいかがでしょうか。
自由からの逃走 エーリッヒ・フロム 著
日高六郎 訳 現代社会科学叢書 刊
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