2016.11.19二つの快挙 管見妄語 藤原正彦さん 

二つの快挙 管見妄語 藤原正彦さん 

こんにちは。
週刊新潮を読んでいたら、数学者の藤原正彦さんのエッセーに目が止まりました。

久しぶりに読みましたが、読むたびに見識のある人だなぁと思います。

数学者なのにこれほど文章が上手なのは、「流れる星は生きている」で有名なお母様、藤原ていさんの影響なのでしょう。頭のいい人って、こういう人のことを言うんでしょうね。
(ちなみにお話もめちゃ上手です)

 

さて、そのエッセーですが、タイトルは「二つの快挙」。

今年起きた世界的な出来事を取り上げ、藤原さんらしい切り口でその本質に迫ります。

一部を抜粋してご紹介しますので、全編は週刊新潮を読んでくださいね。

 
 
さっそくどうぞ。

 

 

藤原正彦の管見妄語

二つの快挙

 二〇一六年は歴史に残る年になりそうだ。六月には英国のEU離脱決定、十一月には米大統領選でのトランプ勝利、と歴史的快挙があったからだ。日本を含め世界中の有識者やメディアは、ほぼ一致して英国のEU残留と大統領選でのトランプ敗北を固く信じ、またそうなることを強く望んでいたから、選挙後の彼等の負け惜しみや歯ぎしりは見物だった。

~中略~

 二つの出来事は、一見無関係に見えながら本質的にはほとんど同一のものだった。それは、ここ三十年間のアメリカ、そして世界に跋扈したグローバリズム(ヒトカネモノが自由に国境を越える)およびPC(ホリディガリー・コレクト、ありとあらゆる差別や偏見をなくすこと)への反乱であったのだ。グローバリズムにより、各国で所得格差が急拡大し、中産階級がやせ細り、国民が持てる者と持たざる者とに二分された。アメリカ型金融資本主義により一蓮托生となった世界経済は、ギリシア程度の小国の経済状況にさえ世界中が一喜一憂するという脆弱な構造となった。一方で移民による社会や教育の混乱、治安の悪化が進んだ。またPCという「きれいごと」により、英米ではミスやミセスがなくなり、日本でも盲滅法が使えなくなるなど大々的な言葉狩りが行なわれた。それどころではない。PCに抵触したとメディアに判断されれば、即刻差別主義者として俎上にのせられ、社会的制裁を受けるようになった。例えば移民の抑制を口にしただけで、非人道的な差別主義者ということで吊るし上げられるから、誰もが口を閉ざすこととなった。PCにより人々はもはや本音で語ることが難しくなっている。この閉塞感とグローバリズムのもたらした悲惨に敢然と立上がったのが、移民排斥と自由貿易協定破棄を掲げたトランプであり、移民とEUのグローバリズムに反逆した英国民だったのだ。

~中略~

今回の大統領選で、メディアはトランプのセクハラや差別発言を連日とり上げ攻撃した。普通なら致命傷となるはずが一向に効を奏さなかった。中下流の大衆はすでに見破ってしまったのだ。政府、金融、メディアなど支配層が弱肉強食のグローバリズムを推し進め、大量の社会的弱者を生んできたことを。そしてPCとはグローバリズムの過酷を糊塗するための小さな善行、すなわち目眩ましに過ぎず、移民批判を封ずるための道具とさえなっていることを。グローバリズムにしがみつく人々とその体制を倒してくれるなら、無教養の成金オヤジでも誰でも構わない。セクハラでも差別でも何でもよい。彼等の怒りはそれほどまでに深かったのである。

 

 

いや~、天晴れですね。
本当にその通りだと思います。
今という時代は、人々の心のうちに抑圧してきた感情が一気に噴き出す時なのでしょう。

キレイごとを言って社会の歪をつくってきた体制に対し、国民が理屈抜きの本音で行動した結果がこの快挙を生んだのだと思います。

 

数年前から社会のたかが外れてきたなと感じてはいましたが、これほど鮮明になるとは。来年からはより一層リアルに世の中が変わり始めることでしょう。

長いものに巻かれる時代が終わりつつあることを改めて実感する今日この頃です。

 

一人ひとりの価値観や生き方、創造性が問われる時代。

いよいよ新しい時代の幕開けといったところでしょうか。

 

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青木 敬司 (あおき けいじ)

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